海獣だけで30個体以上。紙の飼育ノートが現場を止めていた
――まず、大村さんの現在のお仕事について確認させてください。
大村氏 私は、当館のショーチームに10年以上在籍し、アシカ・セイウチ・ペンギンなどの飼育とショーを担当しています。飼育担当の業務は幅広く、餌やりや健康管理のほか、餌の仕入れ、水槽設備の掃除・メンテナンスなども自分たちでこなしています。
株式会社鳥羽水族館 飼育研究部 主任 大村 智氏
――その中で飼育管理アプリケーションを導入されましたが、それ以前の現場ではどのような課題があったのでしょうか。
大村氏 長年の悩みの種は紙の飼育ノートでした。このノートは飼育対象の個体ごとに用意し、チーム全員で共用するので、前の人が記録を書き終えるまで次の人は記入できません。ショーチームでは海獣だけで30個体以上を管理しているため「記入待ち」が常に発生していました。また、紙の記入スペースには限りがあるため、記録すべきことが多い日でも1行で報告を終わらせなければならないことも多くありました。
――業務負担の面ではいかがでしたか。
大村氏 紙のノートはファイリング形式のため、毎朝30個体強分の記録用紙を印刷・ファイリングする必要がありました。慌ただしい朝の時間帯に、こうした非コア業務に時間をとられるのは生産的とはいえず、チーム全員がストレスを感じていたと思います。
―― 紙の記録は保存性や再利用性にも問題があったかと思いますが。
大村氏 おっしゃるとおりです。症例報告のためにデータをまとめる際は、過去のファイルを1枚1枚手作業で遡る必要がありました。しかも、10年以上前の記録はインクが消えていたり、紙が黄ばんで読めなくなっていたりと、貴重な記録が実質的に使えない状態になっていました。
加えて、紙のノートは画像データとともに一元管理が行えない点も不便でした。動物たちの傷口や生殖孔の状態変化は、写真で記録するのが正確、かつ効率的ですが、画像データはチャットツールなどで共有するしかなく、飼育ノートと一元管理できていませんでした。本来まとめて管理すべき情報がバラバラに存在している状況でした。
▲カリフォルニアアシカの餌やりタイム