
なぜ製造現場のノウハウは、データ化されずに失われていくのか? ~暗黙知が製造業のDXを止める組織、活かす組織の違い~
製造業や大企業の現場で、よく聞く言葉があります。
- 「あの人に聞かないと分からない」
- 「この判断は、ベテランの勘に頼っている」
- 「マニュアルはあるが、実際は違う」
これらはすべて、暗黙知と呼ばれるものです。
「属人化が問題だ」
「標準化すべきだ」
DXやデータ活用を進める中で、暗黙知はしばしば「DXの阻害要因」として扱われます。しかし実際には、暗黙知そのものが悪者なのではありません。問題は、暗黙知が構造として扱われていないことにあります。
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暗黙知は現場の「手抜き」ではなく「成果の源泉」
まず前提として、暗黙知は
- 業務を長年回してきた結果
- 試行錯誤の積み重ね
- 現場が成果を出すために最適化してきた知恵
です。つまり暗黙知は、現場がサボってきた証拠ではなく、努力の結晶といえます。
にもかかわらず、DXの文脈では
- 「言語化されていない=ダメ」
- 「データ化できない=非効率」
と、DXの阻害要因として一刀両断されがちです。この捉え方こそが、製造業におけるDXが現場で反発される原因の一つになっています。
なぜ暗黙知は、DXの中で扱えなくなるのか
① 暗黙知を「排除すべきもの」として扱っている
DXプロジェクトでは、
- 標準化
- 自動化
- データ化
が正義として語られ、結果として暗黙知は「なくすべきもの」「邪魔なもの」と見なされがちです。
しかし、暗黙知を無視した設計は現場の実態と乖離し、使われない仕組みを生み、結局、元のやり方に戻るという結果を招きます。
② 暗黙知が「業務判断」と結びつけて整理されていない
暗黙知が扱えない最大の理由は、
「どの判断で使われている知識なのか」
が整理されていない
ことです。
- いつ
- 何を見て
- どう判断しているのか
が曖昧なままでは、暗黙知は「個人の感覚」でしか表現できません。
私たちが支援したある製造現場のデータ活用プロジェクトでは、現場ヒアリングを通じて「測定データと結果データを合わせて分析したい」「稼働ロスを傾向で把握したい」といった要望は整理されていました。可視化のためのBIダッシュボードやKPIの設計およびPoCまで進んだものの、結果として現場業務には根付きませんでした。
振り返ると、現場の暗黙知がどの業務判断で、どのように使われているのかを構造として整理できておらず、暗黙知が判断に結びつかなかったことが大きな要因でした。
③ データ化=数値化だと思い込んでいる
暗黙知は、必ずしもいきなり数値にする必要はありません。
- 判断の観点
- チェックするポイント
- 優先順位の付け方
これらは構造として整理することが可能です。
しかしかつての製造業のDXでは、「数値にできない=データとして扱えない」と判断され、暗黙知はスコープ外にされてきました。
暗黙知を活かすために必要な「3つの柱」
暗黙知をDXで扱うということは、属人化をゼロにすることではありません。目指すべきは、
- 暗黙知が共有され
- 再現され
- 進化していく
状態です。
製造業のDXが機能するかどうかは、DX推進の設計で決まります。これは暗黙知についても同様です。
暗黙知を製造DXの文脈で活かすには、次の3つの柱が不可欠です。
① 暗黙知を「業務判断」として整理する(ビジネスアナリシス)
まずやるべきことは、製造現場において
- どんな場面で
- どんな判断が行われ
- そこにどんな暗黙知が使われているか
を整理することです。
これは、「勘をデータにする」ことではありません。「業務判断の構造を言語化する」ことです。
業務判断の構造を言語化するためには、業務を体系的に整理し可視化する事が必要になります。ここで有用となるのが「ビジネスアナリシス」の考え方です。
② 判断に必要な情報として可視化する(意思決定インテリジェンス)
暗黙知をすべて明文化・数値化する必要はありません。長年培われてきた暗黙知を参考とし、
- 判断の観点が共有される
- チェックすべきポイントが揃う
状態を作ることが重要です。これにより、ベテランでなくても同じ基準で判断ができるようになります。
③ 現場が更新・進化させ続けられる(分析活用・内製化)
暗黙知は、下手にルール化や標準化を行おうとすると、業務全体の破綻を来しかねません。状況に応じて判断基準を変えるのがそもそもの業務要件であることも多いのが暗黙知の実態です。
だからといって暗黙知を個人の知見に留めていたのでは、いつまで経っても技術継承は進みません。
現場担当者自身が、
- データを見る
- 気づきを言語化する
- 次の改善に使う
これらのサイクルを自ら回し、内製化できることが重要となります。
暗黙知を活かす製造DXを支援する、データ分析総合支援サービスDataVein
暗黙知を活かす製造DXには、
- 業務理解
- 判断設計
- 運用・定着
の3本柱が不可欠です。これらを分断せずに扱う取り組みの一例が、パナソニック デジタルの現場伴走型データ分析総合支援サービスDataVein(データヴェイン) です。
DataVeinでは、
- 暗黙知を排除せず
- 業務判断として整理し
- 現場とともに設計する
ことを前提に、データ活用を進めます。そのため、「DXを推進したら、逆に現場がやりにくくなった」という状態を避けることができます。
詳しくはパナソニック デジタル「DataVein」のページでご確認ください。
まとめ:暗黙知を無視するDXは、必ず現場で止まる
製造業における暗黙知は、DXの敵ではなく、現場の抵抗の原因でもありません。
設計されていない製造DXが、暗黙知の活用を妨げているだけです。
暗黙知を個人のものから組織の資産へ変えられるかどうか。それが製造現場のDXを成功させるかどうかの分かれ道となります。
パナソニック デジタルではお客様のDX推進に貢献する各種ソリューションをご提供しております。お役立ち資料もぜひご覧ください。


