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なぜ製造業のDXは「現場の抵抗」に遭うのか? ~経営視点で考える、失敗しないDXに必要なビジネスアナリシス~

製造業の経営企画やDX推進を担う立場であれば、一度はこんな違和感を覚えたことがあるのではないでしょうか。

  • DXに一定の投資を行ったが、経営判断は以前と変わらない
  • 現場の業務はデジタル化されたはずなのに、全社的な生産性向上が見えない
  • PoCでは成果が出たが、横展開・全社展開で止まっている

DX投資が「期待した成果」に結びつかない、これは各社の問題でなく、多くの製造業に共通する構造課題です。

DXの掛け声や投資規模に対し、経営成果が比例していない原因はどこにあるのでしょうか。

目次[非表示]

  1. 1.「現場の抵抗」は結果であって、原因ではない
    1. 1.1.経営企画が直面するDXの「三つの壁」
  2. 2.失敗事例:PoCは成立したのに、それでも現場に根付かなかったBIダッシュボード
  3. 3.失敗事例に学ぶ「データ活用業務のあるべき姿」の重要性
  4. 4.データ活用業務のあるべき姿を可視化する「ビジネスアナリシス」
  5. 5.経営視点でDXを成立させるために必要な「3つの柱」
    1. 5.1.① 経営戦略と現場業務をつなぐ設計(ビジネスアナリシス)
    2. 5.2.② 判断を変えるためのデータ活用(意思決定インテリジェンス)
    3. 5.3.③ 組織として回り続ける仕組み(分析活用・内製化)
  6. 6.3つの柱を網羅的に支援する、データ分析総合支援サービス「DataVein」
  7. 7.まとめ:DXの成否は「設計」で決まる

「現場の抵抗」は結果であって、原因ではない

製造業のDXが進まない理由として、しばしば挙げられるのが、「現場が変化を嫌がる」「ITリテラシーが低い」といった説明です。

しかし、経営視点で見ると、これは本質ではありません。現場の抵抗は結果であり、原因はDXの設計段階にあります

多くのDXプロジェクトでは、

  • 経営:中長期戦略・ROIを重視
  • IT:システム・データ基盤を重視
  • 現場:日々の業務・KPIを重視

それぞれが正しい主張をしているにもかかわらず、
共通の目的・共通の判断軸が整理されないまま走り出しているのです。

経営企画が直面するDXの「三つの壁」

壁①:DXの目的が「経営課題」と接続されていない

DXが「データ活用」「可視化」「AI導入」といった手段の議論に終始し、どの経営判断を変えたいのか」が曖昧なまま進むケースは少なくありません。

結果として、DX施策が個別最適に留まり、経営としての成果(利益改善・リードタイム短縮・競争力強化)に結びつかなくなります。

壁②:現場業務の実態が経営レベルで把握されていない

製造業の業務プロセスは、表面的なフロー図だけでは語れません。

  • 属人化した判断
  • 暗黙の優先順位
  • 非公式な調整や例外対応

これらを十分に理解しないままDXを設計すると、経営が描くTo-Beと、現場のAs-Isの乖離が拡大します。

壁③:全社で「同じ言葉」で議論できていない

DXが進まない企業ほど、

  • 経営は「成果」を語り
  • ITは「仕組み」を語り
  • 現場は「負荷」を語る

という、三者がそれぞれの関心事のみに焦点を当てた状態に陥りがちです。立場や関心事の異なる三者間の翻訳不在こそが、DXが全社施策にならない最大の要因といえます。

失敗事例:PoCは成立したのに、それでも現場に根付かなかったBIダッシュボード

ここからは、パナソニック デジタルが実際に支援した、グループ内のとある事業会社の製造現場におけるデータ活用プロジェクトの失敗事例についてお話しします。

その事業会社では、他部門に渡る現場担当者に加え、旗振り役として事業会社側の社員をアサインし、当社はデータ連携と要件策定の立場でプロジェクトに参画しました。

事前に現場ヒアリングを行い、

  • 測定データと結果データを合わせて分析したい
  • チョコ停(稼働ロス)を週次・月次サイクルで傾向分析したい
  • 成形条件の履歴を管理したい

といった現場の要件を整理しました。

データ収集から可視化のためのBIダッシュボードの設計、重要KPIの設定までを含めた計画が立てられ、プロジェクトを推進。PoCとしては「形になった」「一定の成果は出た」と評価される内容でした。

良好なPoC結果にも関わらず、そのBIダッシュボードが現場業務に定着することはありませんでした定例会議で活用されることもなく、判断やアクションにつながらないまま、横展開の議論も止まってしまったのです。

失敗事例に学ぶ「データ活用業務のあるべき姿」の重要性

プロジェクトの失敗要因の一つとして挙げられたのが、「旗振り役と現場担当者の温度差」でした。当社は旗振り役の方を通じて現場との連携を行っていましたが、現場との直接的な対話が少ないまま実装を進めたことで、現場の課題感や期待値を十分に掴み切れない状態に陥っていました。

「測定データと結果データを合わせた分析」「チョコ停の傾向分析」など現場の要件自体は整理でき、BIダッシュボードやKPIとして実装してました。しかし、その先にある

「何がどう分かると嬉しいか、業務が変わるか」

という業務と意思決定の整理まで踏み込めていなかったことが、BIダッシュボードが現場に根付かなかった最大の要因です。このプロジェクトで失敗していたのはPoCそのものでなく、PoCに入る前に「データ活用業務のあるべき姿」を構造として描き、関係者間で合意できていなかったことが、本質的な失敗だったのです。

経営課題・業務課題・データ・期待効果を構造として整理し、合意形成するプロセスが欠けている限り、どれだけ優れたツールを導入しても現場には定着しません。「データ活用業務のあるべき姿」を示し、関係者と事前に合意することが重要なのです。

データ活用業務のあるべき姿を可視化する「ビジネスアナリシス」

データ活用業務のあるべき姿を可視化するために有用な活動がビジネスアナリシスです。

ビジネスアナリシスを体系化した世界標準であるBABOK(Business Analysis Body of Knowledge)によると、ビジネスアナリシスとは「ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、企業に変革を引き起こすことを可能にする専門活動」と定義されます。

ビジネスアナリシスは、単なる要件定義や業務ヒアリングではありません。

  • 経営戦略と現場業務を接続する
  • As-Is / To-Be を可視化し、ギャップを明確にする
  • DX施策をロードマップとして整理する

言い換えれば、ビジネスアナリシスとは「DXを経営施策として成立させるための設計行為」です。

このプロセスを経ることで、DXは「個別施策の集合」から「経営変革の手段」へと昇華させることができます。

経営視点でDXを成立させるために必要な「3つの柱」

DXを経営施策として成立させるには、個別施策の積み上げでは不十分です。経営成果に結びつくデータ活用には、次の3つの柱が揃っている必要があります。

① 経営戦略と現場業務をつなぐ設計(ビジネスアナリシス)

DXを経営課題と接続するためには、業務・判断・KPIを構造として整理し、「何を変えるDXなのか」を明確にする必要があります。

この設計がないまま進めるDXは、部分最適に留まり、全社展開できません。

② 判断を変えるためのデータ活用(意思決定インテリジェンス)

経営に必要なのは、データそのものではなく、意思決定を変えるための示唆です。経営・事業・現場それぞれの判断に直結した形でデータが提供されて初めて、DXは経営の武器になります。

③ 組織として回り続ける仕組み(分析活用・内製化)

一部の専門組織に依存したDXでは、スケールも再現性も生まれません。人材育成や文化醸成を含め、組織全体がデータを使いこなせる状態を設計することが不可欠です。

3つの柱を網羅的に支援する、データ分析総合支援サービス「DataVein」

これら3つの柱は、いずれか一つだけでは機能しません。設計・実装・定着までを一体で進めてこそ、DXは経営成果に結びつきます。

パナソニック デジタルの現場伴走型データ分析総合支援サービスDataVein(データヴェイン) は、
  • ビジネスアナリシス(業務プロセス革新)
  • 意思決定インテリジェンス(分析・可視化)
  • 分析活用・内製化支援(人材育成・文化醸成)
    という、データ活用に不可欠な3本柱を一つのストーリーとして提供するソリューションです。DXを単なるIT投資で終わらせず、経営変革として成立させるための土台を備えています。

詳しくはパナソニック デジタル「DataVein」のページでご確認ください。

まとめ:DXの成否は「設計」で決まる

DXが現場の抵抗に遭うのは、現場が変わらないからではありません。変わる理由と道筋が、経営から正しく示されていないだけなのです。

経営企画・DX推進に求められているのは、以下に示すような取組みです。

  • 投資判断としてのDX
  • 再現性のあるDX
  • 現場とともに進むDX

そのための第一歩が、ビジネスアナリシスによる設計といえます。

DXを「やるか・やらないか」ではなく、「どう設計するか」から考えてみてはいかがでしょうか

パナソニック デジタルではお客様のDX推進に貢献する各種ソリューションをご提供しております。お役立ち資料もぜひご覧ください。

松尾和世司
松尾和世司
製造業向け生産管理システムの構築、インフラ運用、データセンターセキュリティ担当などを経て現職。 マーケティング施策の立案と実行および、お客様にITのトレンドや最新技術情報をお届けするエヴァンジェリストとして活動。 一般社団法人 日本ITストラテジスト協会 理事 副会長。 【資格】 ITストラテジスト/プロジェクトマネージャ(他、情報処理技術者試験 全区分) 情報処理安全確保支援士(登録番号:007992) Salesforce 認定 Service Cloud コンサルタント BCAO認定 事業継続主任管理士 他

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