
組織のサイロ化を解消する「SSOT」とは? ~データ基盤を整備しても、データが活用できない理由~
データ活用やDXを進めてきた企業ほど、こんな声が聞こえてきます。
- データレイクやDWHは構築した
- 各システムのデータは集約されている
- それでも、会議では部門ごとに異なる数字で報告が上がってくる
最終的には、
「この数字の出所はどこか?」
「正しい数字はどれ?」
という議論に時間が費やされ、意思決定そのものが後回しになります。このようなデータ基盤はあるのに、数字が揃わないという違和感は、俗に「Excelバケツリレー」と呼ばれるものと同じ根を持つ問題です。
関連記事:Excelバケツリレーから脱却できない組織の構造問題 ~なぜデータ活用は、いつも「手作業」に逆戻りしてしまうのか?~
本記事ではこの問題を「SSOT(Single Source of Truth)」という視点から解説します。
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SSOTは経営管理に不可欠
SSOT(Single Source of Truth)とは、「組織として信頼できる、唯一の正しいデータ源」のことです。経営企画部門やIT部門であれば、その重要性を否定する人はいないでしょう。
それにもかかわらず、
- 部門別に独自の集計が残る
- 「参考値」「暫定値」が横行する
- 結局Excelで最終調整する
という状態から抜け出せない企業が大半です。
特に部門毎に個別の業務プロセスが残る状況は「組織のサイロ化」とも呼ばれ、全社横断のDXを阻害する一大要因となります。
なぜ、SSOTが必要なことは分かっているのに実現できないのでしょうか。
SSOTが機能しない3つの構造要因
① データ基盤の役割が「データの収集」止まり
多くのデータ基盤は、
- データを集める
- 保管する
- 可視化する
ところまでは整備されています。
しかし、
「このデータは、どの判断に使うのか?」
という目的や背景が整理されていないため、使いどころの分からないデータの倉庫になりがちです。
その結果、現場や部門は「自分たちが使いたい、自分たちだけが分かる数字」を別途作り始め、組織のサイロ化が再生産されていきます。
② 業務・KPI・データの関係が整理されていない
SSOTは、単に「データが1か所にある」状態ではありません。
- どのKPIに
- どのデータが使われ
- どの粒度・更新頻度が正なのか
が定義されて初めて、SSOTは意味を持ちます。
この整理がないままでは、「経営向け」「事業部向け」「現場向け」それぞれ別の数字が必要になり、結果としてSSOTとは別に複数のデータソースが存在する矛盾が生まれます。
③ 「現場の柔軟性」を優先し、全社統一できていない
SSOTの必要性をお伝えすると、必ずといって良いほど返ってくる説明があります。
「全社で統一すると、現場が回らなくなる」
「事業ごとに事情が違う」
これらは確かに一理ありますが、こういった状況を容認してきた結果、
- 例外が積み重なり
- ルールが形骸化し
- 統一基盤は「参考用」になる
という状態に陥ります。
SSOTが形だけ存在し、実際の意思決定は別のデータで行われることは珍しい話ではありません。
失敗事例:SSOTは存在したのに、意思決定に使われなかったプロジェクト
ここからは、パナソニック デジタルが実際に支援した、グループ内のとある事業会社におけるデータ活用プロジェクトの失敗事例についてお話しします。
本事例は、SSOTの重要性が認識されながらも、実際の意思決定には活かされなかったケースです。
その事業会社では、複数部門にわたる製造現場において、データ収集~現場で必要な要素の可視化設計~重要KPIの設定まで包括的に計画を立ててプロジェクトを実行。当社は、データ連携や可視化設計を中心とした支援の立場でプロジェクトに参画しました。
事前に現場ヒアリングを行い、
- 測定データと結果データを合わせて分析したい
- チョコ停(稼働ロス)を週次・月次サイクルで傾向分析したい
- 成形条件の履歴を管理したい
といった現場の要件を整理しました。
これらを踏まえ、収集したデータをもとに、可視化やレポーティングの仕組みを構築しました。BIダッシュボード上には、いわゆる「正しい数字」が揃い、SSOTとして参照可能な状態は確かに実現していました。
しかし、良好な基盤整備の結果にも関わらず、作成したデータ可視化BIダッシュボードが次第に現場で利用されなくなり、プロジェクトとしては失敗に終わりました。
重要なのは、SSOT上の数字が「間違っていた」わけではない点です。
問題は、その数字がどの業務判断で、どの前提条件のもとに使われるのかが整理されていなかったことでした。経営向けの報告、事業部での説明、現場改善の検討など、それぞれで求められる判断の文脈や粒度が異なるにもかかわらず、「どの判断では、どの数字を正とするのか」という合意が事前に作られていなかったのです。
その結果、SSOTは存在していても「参考用データ」に留まり、現場や部門は自分たちの判断に使いやすい数字を別途作り始めました。これはルールを無視した行動ではなく、業務を前に進めるために現場が自然に取った行動でした。
この失敗事例から見えてきたのは、SSOTが機能しない原因はデータ基盤や統制の強さではなく、業務・意思決定・データの関係が事前に設計されていなかったことです。
SSOTを成立させるために、本当に必要な「3つの柱」
ここで重要となるのは、組織のサイロ化はシステムの問題ではなく、現場とのコミュニケーション設計の問題だという点です。
① 業務と意思決定を起点にデータを定義すること(ビジネスアナリシス)
- どの業務判断で
- どの数字を見て
- 何を決めるのか
これを整理せずに、「正しいデータ」だけを決めることはできません。SSOTは業務設計の結果であり、データ基盤単体で成立しないものです。
ここで業務設計をロジカルに行うために有用な考え方が「ビジネスアナリシス」です。
② 判断に直結する形でデータを提供すること(意思決定インテリジェンス)
SSOTには「正しさ」だけでなく「使いやすさ」も求められます。
SSOTがあっても、
- 見づらい
- 解釈が難しい
- 行動に結びつかない
という状況であれば、人は別のデータを使い始めます。
これを防ぐためには、収集し加工したデータを判断に直結する形で提供する「意思決定インテリジェンス」の考え方が必要です。
③ 組織として運用し続けられること(分析活用・内製化)
一部の専門部署や専門家だけが理解しているSSOTは、やがて形骸化します。
- 現場が理解できる
- 業務を他の人に引き継げる
- 例外が増えすぎない
こうした運用前提の設計に加え、データの利活用を現場で内製化できる仕組みがなければ、SSOTは維持できません。
三本柱でSSOTを支えるデータ分析総合支援サービス「DataVein」
ここまで述べてきたように、SSOTは「データ基盤を作れば解決する」ものではありません。
- 業務起点の整理
- 意思決定に直結する可視化
- 組織としての運用・定着
この三本柱を分断せずに設計・実行することが重要です。その実装に役立つのが、パナソニック デジタルの現場伴走型データ分析総合支援サービスDataVein(データヴェイン)です。
DataVeinでは、
- 業務プロセスと判断を整理したうえで
- データ基盤・分析・可視化を設計し
- 現場と経営の双方が使い続けられる形を支援する
ことを前提に、SSOTを位置づけています。
そのため、「SSOTを作ったが使われない」状態を避け、組織のサイロ化を発生させないことを重視しています。
DataVeinのことについてもっと詳しく知りたい方は、パナソニック デジタル「DataVein」のページでご確認ください。
まとめ:ゴールはSSOTでなく、その先にあるデータ活用
SSOTが機能しない組織では、
- データは集まっている
- 意思決定は分断されている
- 組織のサイロ化がなくならない
という状態が続きます。これは、SSOTを目的・ゴールにしてしまっていることが原因です。
SSOTは、「業務」「判断」「組織運用」を設計した結果として初めて成立する、あくまでデータ活用を支援するツールの一つです。
Excelバケツリレーと同様、SSOTの問題も「人」や「ツール」の問題ではありません。設計されていない構造の問題なのです。
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